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ラクトフェリンによるマウスのエネルギー代謝調節
これまで説明したようにラクトフェリンの役割は、単に乳児に栄養を補給するだけではありません。母親が新生児に与える生体防御物質であり、その効果は単に病原微生物の感染防御に止まらず、病原性ウイルスからガンの防御にまで拡がっています。さらに、脳・神経系に働いて疼痛を鎮め、母子の絆を強め、ストレスに抗して体温を維持する働きまで持っています。最終的には良質蛋白質として栄養源になるのですから、その役割は実に多面的です。
内因性オピオイドが体温調節に働いているとすれば、その作用を増幅するラクトフェリンも乳児の代謝に何らかの影響を及ぼしているはずです。急速に発達する乳児の脳は、乳の乳糖だけでは発育に必要なエネルギーを賄いきれません。成人の脳重量は体重の 2%にすぎませんが、全代謝エネルギーの 20%を消費しています。脳はエネルギー浪費型組織なのです。脳成長が活発な乳児では、脳のエネルギー消費は 50%に達します。脳がエネルギー源として利用できるのはブドウ糖だけですから、乳児には脳を成長させるため、ブドウ糖を脳に優先的に供給する仕組みが備わっているはずです。
そこで、幼若マウス(5週令)にラクトフェリンを4週間摂取させ、脂質代謝へ及ぼす影響を調べました(図1)。その結果、ラクトフェリン群も対照群とほぼ同等の体重増加がありましたが、図1右に示す肝臓の脂質含量は、ラクトフェリン投与により対照群と比べ中性脂肪が 41.9%(P<0.01)、総コレステロールが 33.2%(P<0.01)減少しました。この変化に呼応するように、図1左に示す血漿HDLコレステロールが 24.8%(P<0.01)増加し、血漿中性脂肪は 21.4%減少しました(P<0.05)。
体表面積/身体が大きいマウスは、単位容積あたりの熱産生が大型哺乳類の10倍以上に達します。熱の放散による体温低下は代謝の恒常性を損ない最悪の場合には死に至るので、ブドウ糖と脂肪酸を燃料とするマウスのボイラーは常に焚きっぱなしです。両群の摂取エネルギー量は同じですから、ラクトフェリン群は蓄積脂肪が減った分だけエネルギーを他に振り向けたことになります。振り向け先の一つとして、エネルギー消費増大による体温上昇があります。ラクトフェリン摂取により体温が僅かに上昇する可能性があるのです。ヒトでの試験でラクトフェリン内服群は、対照群と比べ起床時と食後一時間の体温が有意に高いからです。 |